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名も無き言葉たち 散文 詩
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寒い一日ね 指先に愛が落ちて
足跡は2人分 絡まりながら結んで
あなたがいるだけで幸せだから
このままずっとずっと抱いて愛して

誓いと約束と快楽を混ぜあって
今を懸命に詰め込んではめ込んで
好きで一杯に満たして溺れる
忘れたくても忘れないくらいに

焦がれ濡れるよう 首筋に雫落ちて
囁かれる言葉だけ 感じて微笑み
あなたに抱きしめられる幸せの意味
愛されるだけの女じゃないから

カーテンを開けて脱ぎあって熱を混ぜあって
魂までも吸いあい貪り味わって
揺れて壊れて新たに作られる
あなたが知らない私になるから

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狂った世界に響く歌
美しく傷痕を残す雨
泡のよに消え 抉った空
灰色の高架下の水溜り
無邪気な足音は遠く

肌をなぞったひと時に
奪いえない定めを感じ
目をそらした瞳は深く
重なるごとに愛してた

揺れる影は溺れぬよう もがきぬく
雨を受けて流れる先で その河で

明日の乾きに悲しむ青
想い出にすがりつく残像
海など見えぬ 鉄の森
きらびやかなまやかしを手繰り寄せ
無垢さを置き去りして走る

胸にうずめたぬくもりは
取り返せない向こう岸
目をこらした瞳は何も
見えずに全てを愛してた

おとぎ話を閉じた後には
染み付いた残り香が噛みつく
笑えたはずの昨日には
真っ直ぐに伸びる銃弾の
描く冷たい月だけ残ってた

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あとどれくらい幸せな時間を過ごせるだろう
あとどれくらいあなたと触れ合えるだろう
恋はいつかは終わるものでしょうか
愛は時間と共に形を変えるでしょうか
大好きと伝えても 何千分の一で
まるで嘘のような時間が過ぎ去って
あなたを大事に思う気持ちだけふくらんで

嫉妬はよくないことと思いながら
焦がれた痛みは抑えきれず
やりきれない思いを抱えて
笑顔がこぼれて時間は早くて
触れたくて遠くて怖くて
失うことを恐れてどうしようもなく
眠りの中の夢は美しく

あとどれくらいを考えるよりも一緒にいたくて
まだどれくらいの楽しみが降り積もるのか
恋とはいつかの思い出になるのでしょうか
愛は時間だけの中で伝わるものでしょうか
大好きの言葉に 意味はいくつあって
まるで嘘じゃない言葉は嘘のようで
あなたは大事になって気持ちは膨らむ

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雨が降ってるね
「黒豹が車道を走ってる」
本当だ 自転車で踏み潰そうか
「すばしっこいよ」
小雨なのにね 水溜まりは逃げないよ
「光が乱反射してる」
そうだね 街灯も信号も転がってるよ
「細かくしてみたいね」
乱れるだけかもしれないけどね
「意地悪だね」
現実は柔らかくないみたい
「街灯が両側にずっと並んでいて滑走路みたいだ」
綺麗だね 飛行機みたいに飛べるかな
「飛べないよ」
自転車だから?
「自転車だから」
ロマンチストなんだ
「そうかな? 前からだよ」
僕が気がついていなかっただけなんだね
「今わかっただけで充分さ」
飛んでみようか
「眼鏡に雨粒がついて目の前が壊れてる」
空は晴れそうだから今がチャンスだね
「煙るような夜にならなくてよかった」
そうだね 僕と君はずっと一緒
「夜だけは静かだからね」

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ねじ切れそうな痛みに
舌が乾いて声が出ない
死にたがりの靴の裏
ベトリ付いた 匂うしみ

大切なことは何でも
抱え込んで生きてきたつもり
両手いっぱい零れ落ち
囲むものが踏み散らす

君が伸ばした手の平に
大きな風穴ぶち開けたい
銃弾頭を貫いて
空いた穴から空を見たい

望む世界が朽ちるなら
望まぬ心に染まるなら

ねじ切れた夜の光
爪が汚れて指を握る
引っ掻き回すだけの昨日
奥歯が骨をすり潰す

守れるものは何でも
両手広げて傷ついてきたつもり
切り刻まれた日常に
勇気は成長するのか

悩みの種を植え付けて
咲いた華をぶちまけたい
百花繚乱燃やしつくし
撒いた灰から星を見たい

帰らぬ鴉は引き裂いて
鎖と過去が縛るなら

砕いた欠片喉の奥
刺さり引き抜く杭と自分
世界乾き雨を待つ
血をすすり愛せるほどに

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太ももは細波に濡れていた
砂を流れる赤い筋に
あなただけは海に返るのかと
羨ましく思っていた

月は丸く浮かんで
風船みたく転がって
海は水平線から
世界を削って創る

子供たちは生まれている
陸に上がって母を忘れると
もう海には帰れない

砂に手の平を打ち付けて
打ち寄せる波にもがき
あなただけは海で泳ぐのかと
羨ましく思っていた

雲は細く立ち上り
蟹のように交尾して
月が沈む前に
世界を削って創る

子供たちは放たれる
ぬくもりから引き離されると
もう海には戻らない

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お前は眼前の荒野で何を見たか
希望に打ち震えるには多くなく
絶望に屈するには美しすぎる
お前はその手で何を掴むか
手を汚すことを厭うか
汚れ傷ついても使い続けるか
土を知らぬものは根を張らぬ
空を知らぬものは枯れ果てる
風を知らぬものは腐りゆく
岩を噛み砕き
研ぎ澄まされた刃を欠く
挫折を黄金となすに
お前の体は万全か
目を見開け
つまづかぬように気をつけ
空の果てに思いを馳せ
喉を潤す雨を待つがいい
お前が土に種をまいたのならば
答えを得ることができるだろう

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道がある
大切にしたいものがある

歩く中で
触れ合える距離
抱き合える距離
会話できる距離
見られる距離

思い通りにはならない
思い通りには変えられない
人には人の道
人には人の思い

思い通りにいかせる
思い通りに変えていく
自分には自分の道
自分には自分の思い

一緒に見れたら楽しい
一緒にできたら嬉しい
分かち合い与え合い
共にいられたのなら

瞬間瞬間が
大切にしたい想い出になる

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ふわっとふくらんで消える
たくさんあったような
そうではないような
大切だったような
あいまいではないもの

ぷくりとふくらんで弾ける
いくつかあったような
そうではないような
守っていたような
忘れられなかったもの

思い出してみて
繰り返してみて
夢のように
泣かないように
手をとって
ぬくもりの中に
ふくらんで消えていく
あいまいではないもの
忘れられなかったもの

この世界に存在したもの

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悲しみは積み重なっていくものか
薄い膜が何枚も折り重なり
消えずにいつまでもあるものか

シャワーを浴びながら
むせ返ったような咳をひとつ
嗚咽にも似た咽びをひとつ
排水溝に吸い込まれて
汚水がたまったように泡をたたえる

苦しみは積み重なっていくものか
薄い憤怒が悔やみを抱き込み
薄れずにいつまでもあるものか

世界の声は小さく広く
弾き返す脳が壁を作る
涙にも似た冷や汗がひとつ
出血にも似た日々がひとつ
今日という怠惰に落ちて
濁った心は魂を劣化させる

雨とは似ても似つかず
酸性の液体が体を溶かす
声を溶かし勇気を溶かし
誰かの輝きを奪い去る

しがみ付いた手の平に
握られたうろこ雲
滲む雫は指の間から漏れて
雨とは似ても似つかず地に落ちる

眠る種は何かもわからず
種があるかどうかもわからず
瞳は潤み見えなくなりそうで
雨とは似ても似つかず降り注ぐ

やがて薄れる切なさは
時間よりも心の強さで
雨上がりの虹のように
一瞬輝いて人に焼きつき
雨とは似ても似つかず

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