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名も無き言葉たち 散文 詩
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闇の中
ヒトリ
カエデの紅も
朝焼けに滲んだ色も消えて
夕闇に溶けた安らぎも喰われ

掌を鉄に打ち付け散った飛沫は
波が引いて闇
血潮とともにたたずんで
声はひっそりと風に揺れて
色は抑えて
記憶に染めて
香りも 景色も

街灯に影が伸び
ヒトリ
公園の横
子供の喧騒は名残となって
携帯の明かり
ヒトリデ

冬の星座は輝かしく
巨大な街から離れた静けさ
カサリ シュラリ
乾いたカエデは踏みつぶされて

小さな闇の中
家路について
立ち止まることが怖くて
見上げた紅
過ぎ去る瞬間に
シャラリ パサリ
ひとひら落ちる

忘れた言葉を思い出して
いつしか臆病になった声を抑えて
生きるために枯れて紅
まるで矛盾のようで生きている

闇の中
ヒトリ
カエデの紅も
朝焼けに想った愛も忘れて
夕焼けに喰われた心に安らぐ

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あなたの毒になれたら
あなたを少しずつ殺せられたら
私のことを拒めず
私だけに苦しんで
私があなたを満たして
私に最後は支配されて

あなたの毒になった私は
あなたの血を巡って
あなたの脳内を変えて
あなたの心臓を掴んで
あなたの陰部を包んで
あなたの心を締め上げる

気が付かないほどの毒がいい
ゆっくりまわって
気が付いた時には手遅れで
ゆっくり増えて
気が付くほどにはっきりと
握って 潰して 塗りたくって
狂って 叫んで 名前を彫って
私はあなたの毒になる

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つい引力に導かれ君の元に来たよ
朝日眩しいこの世界で好きな声を聞いて
私目覚めて新しく走り出すよ
道の先に見える景色を追い求めて
昨日まであった暗さを振り払ったよ

昨日の話をしよう
明日の見えない希望に手を伸ばして
恋に落ちる自分も知らずに
いつか胸は締め付けられるよ

つい言葉で積み上げ夢を喉の奥にしまったよ
光眩しいあの世界で好きな声を聞いて
私共にいて一緒に走り出すよ
いつかあなたのいる景色を目指して
道の先に見える景色追い求めて

明日の話をしよう
昨日の見えない絶望を切り払って
誰かに惚れて道をなぞらえ
いつかは胸が満たされるよ

両手を差し出して
両腕を伸ばして
こぼさないように
つかみ取ろうと試みて

つい別れを積み上げようとふざけてしまったよ
命の眩しいあの世界で好きな声を聞いて
私誰かの手を引いて走り出すよ
いつかあなたが教えてくれた嬉しさ
まだ辿り着けない景色を掴んで

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黒い森を抜け
鋼鉄の馬車は走り抜ける
隣には君
何処へ行くのか馬を叩いて
雨にさらされ

暗い 暗い
光 光

いくつもの冷たい柱
見えてくる光
線を引いて消える

夜明けには遠く
知らない時間は走り抜ける
射し込んだ苦痛
心が抉られ落ちるから拾う
影にさらされ

冷たい 冷たい
明日 明日

消し炭みたいな過去
重なった過去は回り続ける
うずくまった声に
何度も拾い上げては高く
夜明けにさらして

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喉が焼けそうな液体
氷の中に沈んで
夏の毒気で溶けている

くるくる氷を指で回す
隙間の密度が詰まってくる

道化師みたいな雲間
嘲笑っているようだ
笑顔が引きつる仮面さ

くるくる命を指で回す
隙間の密度が詰まってくる

酔えなくなりそうな夜更け
無理に酒を流し込んで
腐った心でふやけている

10倍速で流す雲は素敵さ
素敵な分だけきらめいている
命を無駄に使いたがって
幸せな場所だけ切り取りたい

遠くに行ってしまったけど
感じなくなってしまっていた
近くに感じるようになったけど
感じすぎるようになった
慣習に腐って 習慣に溺れる

肉体が焼け付いていって
氷の命は溶け
箱の外へ流れ出ている

くるくる命を指で回す
隙間の密度が詰まってくる

10倍速の人生を感じさせてよ
不幸は全部切って羽だけで
私はいつでも欲しいだけ
幸せな果てへ辿り着きたい

くるくる命を指で回す
グラスの中はやがてぼやけてく

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詩をつづりました
僕の魂の言葉を誰も
「理解できない」
と言い
時には蔑まれました

ある人が現れました
「君、言葉は、この書式を通したまえ」
僕はその通りにしました

途端に理解されるようになり
途端に僕の心とは別の心が形成された

取り残されるようになった魂に
追いつこうとする筋肉の動きに

チグハグ チグハグ
アアワワ アワワア

目に見えたものを加工して
目に映らないものを伝えて

どうして僕は取り残されて
どうして僕の残像はコピーされて

大人になった人たちは
垂れ下がった綱を見上げて

どんなに訴えても
どんな景色があっても

チグハグ チグハグ
アワワア ワワアア

零れて垂れて引きずる雫
汚れとも思わずに明後日へ

どこか忘れて躍りあかして
帰るべき場所はないと言い張って

ある人が言い残しました
「あの、あなたへは、どう伝えようかわからなくて」
僕は問い続けました

詩をつづりました
影の谷間の隙間で誰もが
「理解できない」
と叫んで
時には戦いました

そのままの世界続き
「君、世界は、努力が足りなかったから……」
僕は黙れと拒絶しました

途端に悲しみに閉ざされて
途端に僕の心とは別の心が形成された

取り残されるようになった魂に
追いつこうとするぬくもりの動きに

チグハグ チグハグ
ワワワワ アアアア

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激しい雨が 屋根を叩く
体を叩くような 音を立たせて
激しい雨は 我が命を踏みつけそうで

怖い夜を 過ごして一瞬
雨脚弱まり 杞憂の懸念

我が魂のあやふやさよ
明日には忘れて新しく

かの人よ あなたの魂は何処
河を渡りし かの人たちよ
我が言の葉は何処に帰りしか
我が魂よ 我は何処の人の言葉を語りしか

我が美しき かの人たちの雷命よ
轟き慟哭しつづける雷鳴なる命の動揺よ
我が悲哀は 永久に語り続け
我が美しさは 永久に囚われ続け
美しき 広がる彼岸の色よ

激しい雨が 余韻を残す
景色を割るような 色を広げて
激しい雨の 夢痕のようなほころび

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壊れそうなほど伝えても
振り向いてくれない数え切れないもの
壊れた沢山のものを捨て去って
振り返りもしない無駄に思えるもの

何も背負いもせず 何かにのしかられつつ
自分は誰なんだ 自問自答繰り返して
まるで馬鹿な犬みたいに 餌を探してる

壊れそうなほど叫んでも
振り返らない人々の波の中で
壊れた沢山のものを拾い集めて
零れていく抱えきれずに落ちていく

生きられも死もせず 流されるまま腐れつつ
世の中は何なんだ 若さのまま繰り返して
まるで汚れ猫みたいに 人を拒否してる

壊れそうなほど外れても
満たしてもくれない命の問いかけ
壊れるこれからのものが不安で
笑えもしない臆病な日々は進まず

壊れそうなほど生きていると
振り向き笑いあった少なからずの絆
壊れそうな数々の時を集めあって
語り笑い合えるんだ無駄のようなもの

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     窓際で君は死んでいた
       青白く眠るように
    光の粒を腐敗の種として
    冷たい瞳は開いたままで
   流れるテレビのニュースを
聞こえなくなった耳に届けている

     感じなくなった皮膚を
    君が飼っていた熱帯魚が
 気がつきもせずになぞっている
     夏の灰は空を切り刻む
      降り注いだ色の破片
    君の死から一日もせずに
   歌うことを忘れてしまった 全てのもの

   君を感情のまま抱きしめる
   薄紅の唇に一番近くなって
  いずれ滅び行く全てのものを
 救えず自分だけ生きながらえた
 後悔の園をナイフで切り分けて
 涙を散らしながら地につまづく

       窓際の君の死体は
         美しいほどで
     風になびくカーテンは
       君の頬をかすめて 君を壊した
  全ては元に戻らず進んでいく
 きっと夢のように現実を捉えて
すべては過ぎ去った時の暗闇へと

  モーターの音が部屋を満たし
    冷蔵庫は動き続けている
  君がやり残した全てのことは
 二度とわからず閉じ込められた
  見渡せば終わりゆく心だけが
    ホルマリン漬けにされて
     あがいた力は空へ帰り 世界は零へ


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半透明のビニール袋を被り
得体の知れない物体が
くらげのように泳いでいた
水のように形は変わり
イカのようにも
貝のようにも見えてくる

半信半疑の世界を頭に被り
得体の知れない思考が
くらげのように泳いでいた
石のように脳は固まり
散ったハスのようにも
アスファルトの欠片にも見えてくる

溺れ死んでしまいそうな
世俗の空気は
大気に泳ぐ生き物を殺していく

反対車線のハイビームを被り
得体の知れない厳罰が
くらげのように泳いでいた
灰のような汚れに変わり
着ている服となって
看板を掲げているようにも見えてくる

小さな世界にしがみつき
捨てられずに澱み
外の世界への窓は鉄のカーテン

反省文を並べ立て体を覆い
得体の知れない恐怖が
くらげのように泳いでいた
明日のように時間は鈍くなり
枯れた花のようにも
会えない恋人のようにも見えてくる

もうわからないくらいに
半透明のビニール袋
叫び声も遮られて
いつの間にか窒息しそうな
袋の中に紙くずのように
入れられて呼吸してる

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