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名も無き言葉たち 散文 詩
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からっぽのカバン一つだけ持って
全部中身は夢さだなんて ふざけた虚勢
詰め込めるもの 底からこぼして
拾い集める 名もない夜 顔ない他者

ジュラルミンケースの中の現金
レザーバッグの中のソムリエナイフ
ハンドバッグの中の口紅とチーク
ボストンバッグの中の金属バット

壊れた頭 脳みそ散らして 吠えるだけ
全部中身は社会への抵抗 思考停止
詰め込んだ情報 口から垂らして
嘔吐し続ける 名もない言葉 顔ない他者

キャリングケースの中のパンフ
ビジネスバッグの中の書類
リュックを背負って頂上目指す
ショルダーバッグの中の火炎瓶

輪郭繋がってない 肉の袋から漏れる
逃げずに逃走失踪 格好つけて浅はか
居場所ない魂 カバン集めて
沢山入れよう 詰めよう 見えるだけの道具を

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涙の道は続いているのか
涙が示す先は何なのか
わからない わからない
怖くて砕けそうになって
綺麗な心の水晶は
粉々にひび割れるようで
綴った文字の先で
全てを見ようとして

腕を恐る恐る伸ばして
指先震える明日が

誰かを傷つけてしまいそうな
涙の先の影遊び
指がトコトコ歩いて飛んで
不器用な形を結んで解いて
まだ笑えぬ花の
青臭く届かぬ夢の先

指先が踏んで影は散る
涙の流れた光はか細く
明日を示すには足りない

青臭く未熟な夢の先
まだ微笑まぬ針の
不器用な縫い目を結んで閉じて
指がユラユラなぞって語って
涙の先の影遊び
誰かに頼ってしまいそうな

指先震える明日が
体を細々と困惑させて

全てを見ようとして
綴った文字の先で
粉々にひび割れるようで
綺麗な心の水晶は
怖くて砕けそうになって
わからない わからない
涙が示す先は何なのか
涙の道は続いているのか

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この星が溶けてしまったとして
僕が君を守ることは難しいだろう
この星が生きられなくなったとして
僕が君を生かすことは難しいだろう
どれだけの想いがあったとして
どれだけの信仰があったとして
僕の存在はあまりにも非力すぎる

君は愛すべき存在で
君は世界一大事で
君のために命を捧げても
僕は君の言葉の前では無力だ

僕の命一つでは足りない
僕の血で綴る文字は霞む
僕の必死の叫びは小さく
僕の涙は誰も知らない

それでも愛を叫んでいるのか
それでも想いがあると問えるか
それでも僕の言葉は届くのか

沢山の言葉の中から僕を選んでくれたら
沢山の想いの中から僕を選んでくれたら
沢山の命の中から僕たちは見つけられたら

「明日」という名の何かを紡げる
「明日」という名の今を生きれる
「明日」という希望の血を流せる

僕は君のために戦いたい
僕は僕のために生き抜きたい
僕らは握った手のぬくもりのために
僕ららしい笑い方をしたい

ただ
抱きしめあうためだけに

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無音で羽ばたく鳥はゆっくりと
水の中をゆらぐように空へと消える
手を伸ばしたがる子供が一人
キノコが胞子を飛ばして雪が降る
綿毛が種を乗せて太陽へ
燃えるような瞳は花を咲かせる
見る夢は 掴みたい夢は
悲しいと 笑うだろうと 君はどこ
意味もなく佇み膝を抱えて
川辺で海の音を右から左へ流している
どこにも見えない世界を見つめて
一人ぼっちの月明かり
音もなく水槽に沈むように
羽ばたいた鳥が鳴き声を落とす
手を伸ばすことを忘れた大人が一人
森が花粉を散らして霞がかる
蚕が繭に包まれ赤子は眠る
母は声も出さずに命の血を流し続ける
見る夢は 忘れた夢は
けだるさの斜め上にある 誰かの瞳
あの日の想いも出会いも
誰も思い出すことはなく

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寒い一日ね 指先に愛が落ちて
足跡は2人分 絡まりながら結んで
あなたがいるだけで幸せだから
このままずっとずっと抱いて愛して

誓いと約束と快楽を混ぜあって
今を懸命に詰め込んではめ込んで
好きで一杯に満たして溺れる
忘れたくても忘れないくらいに

焦がれ濡れるよう 首筋に雫落ちて
囁かれる言葉だけ 感じて微笑み
あなたに抱きしめられる幸せの意味
愛されるだけの女じゃないから

カーテンを開けて脱ぎあって熱を混ぜあって
魂までも吸いあい貪り味わって
揺れて壊れて新たに作られる
あなたが知らない私になるから

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狂った世界に響く歌
美しく傷痕を残す雨
泡のよに消え 抉った空
灰色の高架下の水溜り
無邪気な足音は遠く

肌をなぞったひと時に
奪いえない定めを感じ
目をそらした瞳は深く
重なるごとに愛してた

揺れる影は溺れぬよう もがきぬく
雨を受けて流れる先で その河で

明日の乾きに悲しむ青
想い出にすがりつく残像
海など見えぬ 鉄の森
きらびやかなまやかしを手繰り寄せ
無垢さを置き去りして走る

胸にうずめたぬくもりは
取り返せない向こう岸
目をこらした瞳は何も
見えずに全てを愛してた

おとぎ話を閉じた後には
染み付いた残り香が噛みつく
笑えたはずの昨日には
真っ直ぐに伸びる銃弾の
描く冷たい月だけ残ってた

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あとどれくらい幸せな時間を過ごせるだろう
あとどれくらいあなたと触れ合えるだろう
恋はいつかは終わるものでしょうか
愛は時間と共に形を変えるでしょうか
大好きと伝えても 何千分の一で
まるで嘘のような時間が過ぎ去って
あなたを大事に思う気持ちだけふくらんで

嫉妬はよくないことと思いながら
焦がれた痛みは抑えきれず
やりきれない思いを抱えて
笑顔がこぼれて時間は早くて
触れたくて遠くて怖くて
失うことを恐れてどうしようもなく
眠りの中の夢は美しく

あとどれくらいを考えるよりも一緒にいたくて
まだどれくらいの楽しみが降り積もるのか
恋とはいつかの思い出になるのでしょうか
愛は時間だけの中で伝わるものでしょうか
大好きの言葉に 意味はいくつあって
まるで嘘じゃない言葉は嘘のようで
あなたは大事になって気持ちは膨らむ

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雨が降ってるね
「黒豹が車道を走ってる」
本当だ 自転車で踏み潰そうか
「すばしっこいよ」
小雨なのにね 水溜まりは逃げないよ
「光が乱反射してる」
そうだね 街灯も信号も転がってるよ
「細かくしてみたいね」
乱れるだけかもしれないけどね
「意地悪だね」
現実は柔らかくないみたい
「街灯が両側にずっと並んでいて滑走路みたいだ」
綺麗だね 飛行機みたいに飛べるかな
「飛べないよ」
自転車だから?
「自転車だから」
ロマンチストなんだ
「そうかな? 前からだよ」
僕が気がついていなかっただけなんだね
「今わかっただけで充分さ」
飛んでみようか
「眼鏡に雨粒がついて目の前が壊れてる」
空は晴れそうだから今がチャンスだね
「煙るような夜にならなくてよかった」
そうだね 僕と君はずっと一緒
「夜だけは静かだからね」

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ねじ切れそうな痛みに
舌が乾いて声が出ない
死にたがりの靴の裏
ベトリ付いた 匂うしみ

大切なことは何でも
抱え込んで生きてきたつもり
両手いっぱい零れ落ち
囲むものが踏み散らす

君が伸ばした手の平に
大きな風穴ぶち開けたい
銃弾頭を貫いて
空いた穴から空を見たい

望む世界が朽ちるなら
望まぬ心に染まるなら

ねじ切れた夜の光
爪が汚れて指を握る
引っ掻き回すだけの昨日
奥歯が骨をすり潰す

守れるものは何でも
両手広げて傷ついてきたつもり
切り刻まれた日常に
勇気は成長するのか

悩みの種を植え付けて
咲いた華をぶちまけたい
百花繚乱燃やしつくし
撒いた灰から星を見たい

帰らぬ鴉は引き裂いて
鎖と過去が縛るなら

砕いた欠片喉の奥
刺さり引き抜く杭と自分
世界乾き雨を待つ
血をすすり愛せるほどに

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太ももは細波に濡れていた
砂を流れる赤い筋に
あなただけは海に返るのかと
羨ましく思っていた

月は丸く浮かんで
風船みたく転がって
海は水平線から
世界を削って創る

子供たちは生まれている
陸に上がって母を忘れると
もう海には帰れない

砂に手の平を打ち付けて
打ち寄せる波にもがき
あなただけは海で泳ぐのかと
羨ましく思っていた

雲は細く立ち上り
蟹のように交尾して
月が沈む前に
世界を削って創る

子供たちは放たれる
ぬくもりから引き離されると
もう海には戻らない

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