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名も無き言葉たち 散文 詩
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散らばったパズルを前に
手を地に這わせ
ピースを探す
どれをどうはめれば
この箱にぴったりと収まるのか

無数のピースを
箱にすべて埋めるには
一日だけでは足りない

過ぎていく時間
見つめる目に怯える

優しく見守ってくれる目が
いつ呆れ返り
冷たくなるのか
怖くて怯える

待っていてね
上手に詰めるから
心は焦り
出来ない日々に
失敗を責める
自縄自縛

たったひとつの思い
あなたに好きでいて欲しい
雨を降らす私を
雨に濡れる箱の中を
パズルのピースを
涙が出そうなほどの必死さを
見捨てずにいて
傍にいて 傍にいて

指先は汚れ
あなたに触れるとき
汚れはしないかと
あなたが顔を背けはしないかと
嫌われなくない
何度もひっくり返しては
詰めなおす
箱詰めパズル

愛しているから
大好きだから
上手に詰めるから
難解な 見たこともない
箱詰めパズルの前で
涙の出そうなほどの思いで
愛しさを詰めようと
大好きを詰めようと
必死に 必死に
詰めては引っくり返す

行かないで
捨てないで
お願い お願い
きっと上手にやるから
きっと上手にできるから
すべて綺麗に詰めることができたら
頭を撫でて
よく出来たねと
心から笑って 褒めてください
あなたへの気持ち一つで
生まれて初めて出来た
箱詰めパズルの前で

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何かを根拠にしているわけでもなく
信じられる決定的なものもなく
一人だけ ただ一人だけ
自分が感じた想いだけを信じて
弱くなり折れてしまいそうな
無数の不安と戦い
祈りにも似た強さを持つ

それは自分の信じたものを信じること
信じさせてもらうよりも
目をそらさずにいること

流れるものの無限の中で
一人だけ ただ一つだけでも
流されず 強く自身を持って
戦い 引かず 魍魎の陰にも怯えず
手をかけられる 疑心の囁きを振り払う

天もなく 地もない
苦しみに耐えられず
土煙すらたつような 脱兎の群れの中
座して目を閉じ 幻を絶っていく

悲しみや痛みの幻影は
いくつも群れをなして心を覆う
理由を置き去りにして 心をくすぐる
戦う勇気を奪い去ろうとし
冷たい空気へと晒していく

光までの長い長いトンネル
暗闇を手探りで進む時間
何を信じていいのか
何も信じられないまま
ただ一つ ただ一人 自分だけ
信じたもののために戦う

拍手[1回]

刹那の快楽さえ
脅迫されたように区切らる
花束を持つ乙女は
追い立てられ狩られる

やがてしわがれていく声に
純潔は薄れ 食いつくされる

略奪者は命令する
花などまた咲くものだ
花を摘み取れ
飾り立てろ
金を得ろ 生活を豊かに

顔中を花の色素で塗った
老人老婆を見つめながら
服を破かれた乙女たちは
頬を一筋の涙に濡らす

枯れてくる花園で
昔の栄華の中で
まだはしゃぎたてる
老人たちは命令する
お前たちも
私たちのように幸福に

乙女たちの悲しげな瞳は
ひとつも届かずに
殺しきった悔しさなど
一言も発せられず

老人たちは口々に
乙女は死に絶えた
純潔は失われた
嘆かわしい嘆かわしい

頬に塗り血色をよくするための
紅をつくるために
紅色の花ばかり摘んでいく老人たち

憤慨した乙女は
自らの心臓を取り出し
花へ散らす

なんて素晴らしい紅
喜び摘み取り
踏み散らす

血の色と区別も付かぬ
亡者になれ果てる
老人たちは命令する
今が大事だ
将来を見据えろ
私たちのように
幸福になればいい

乙女たちは一人
また一人と消えていく
生きる希望を踏み散らすのなら
復讐と呪いを込めて
私たちの今日を摘もうと

拍手[2回]

球体ガラス 水滴落ちる
水しぶきのような
あの日の曇りが
落日さえ 消去し
星のような光だけ

無機的な笑顔
背徳と痛みと血痕
純水の中に落ちて広がる
明日なき希望たち

薄い膜の上を
砂塗れの箱は滑り落ち
傷をつけ 危うく
球体ガラスは転がる
脆くなった 薄い膜の上を

高く高くと
広く広くと
出よう出ようと
球面を走り走り
遠く 脱出 元通り
球体の中の
球体ガラス

ざらついた砂の中で
大きな鉄片に衝突
ひびの入った
危うい球体ガラス

割れれば ナイフ
やがてこぼれ出て
柔らかな肉を傷つける
水しぶきのような
水滴ついて
あの日の曇り
見つけていく

拍手[2回]

君とのやり取りは困難で
声だけは聞こえるのに
大事な事は
二人の間で凍りつく
ぬくもりだけは通らずに
冷たく弾けた破片だけが
互いの元に届く
君との間の絶対零度

人とは他人とは
打算と利害と蔑み
刈り取られないように
自らの価値は
下を多くすることにより保つ

凍りついた指先は
壊死する前に砕け散る
誰かに触れることが
これほどの痛みを伴うのなら
氷壁の前で笑っていよう
真実を装って
誠実さを装って
君のために懸命になると
君を助けると言いながら
君との間の絶対零度を
超えていく勇気は持たない

無数の裏切りに塗れ
僕は君たちを許さなかった
穢れを教えてくれた他人を
憎み怒り従い潰された
自己などないほうがいいのだ
心を消して機械のように隷属できれば
これほど悲しむこともあるまいに
君との間の絶対零度は
命あるやり取りを無駄にした

自立することは
君とのやり取りの中に
ココロノヌクモリヲ
ウバイサッテイクコトナノカイ?
僕は絶対に忘れない
君が散々
僕を見下していたことを

拍手[2回]

か細い糸で繋がって
毎日をつむぎ合う

小さな部屋同士を繋ぐ
細い線は
数多くのものを運び
ただひとつ
ぬくもりだけを欠いている

間違ったものを積み重ね
間違いだらけを探し当て
希望を信じて進む若さに
夢を重ね合わせている

辛苦に塗れていても
愛が消えるわけではなく
信じあった一筋の気持ちを
何日も持ち寄って抱く夜

裸電球がベッドの上で揺れる
出会った二人 貪り合い
食い尽くした後に残るもの
愛情と信じて疑わなかった

突き刺さった棘を抜こうと
互いの傷を舐めあって
力任せに抉ってしまい
余計に膿を広げた

水道から出てくる錆びた水
コップに浮かんだ爛れた血
獲得しようとして与えられたもの
いつしか汚れてしまう

あの日夢見た美しい大人は
見る影もなく遠くなった
汚れて生きることさえ
気に留めることさえなくなった

愛した人は消えた
愛すべきものも形を変えた
古い鉄で作られたワンルームは
飾り立てられごまかされている

ぬくもりだけを欠き
ただひとつ
自らの命だけを運んで
細い線は
今や心だけを運ばない

毎日をつむぎ合い
か細い線で繋がっている

拍手[1回]

道化師が踊っている
踊ることは楽しいのだと
死神の手のひらで踊る

人は飽きれば通り過ぎる
道化師の踊りに
付き合っている暇はない

ある青年は甘い果実を持っていた
よく熟していて香りもいい

仮面を被った道化師に
青年は言った
お金は払えないけど
果実をあげるよ

道化師は目もくれずに踊った
きっと踊りに飽きて
立ち去るだろう

青年は飽きずに見ていた
傍を通り過ぎる馬車の車輪
何頭もの牛を連れて歩く商人
チーズを売り歩く羊飼いの少年
神の救いを説く宣教者たち

道化師と青年を通り過ぎる
たくさんの人たちは
少しだけ見て
飽きれば去っていった

数々のものが腐敗し朽ちていく
市場の野菜も
晴れの日の湖畔のように輝く魚も
色とりどりの果実も
おいしそうな食事も
緑色の草原も
色を失い黒ずんでいく

道化師は踊りを止めない
青年は立ち去らない
ふと気づくと
青年の果実は腐っていない

しびれを切らす道化師
何故君は去らない
すると青年
まだ御礼をしていない
果実をあげるよ

道化師は道化を止めて怒り出す
いらないから立ち去れ
僕は迷惑している

青年は微動だにしない
でもおいしいんだ
とても甘い果実だよ

道化師は青年が悪魔にも見えてきた
お前は誰だ
僕は騙されない
お前など誰が信用するものか

道化師を騙した数々の人は
悪魔たちの手先で
甘い嘘に甘い餌
たくさんの幻を用意した

周囲のものは既に朽ち果てていた
世界の中で青年と果実だけは朽ちない

道化師は正体を現すことにした
仮面を取り去り
骸骨の顔をあらわにした
よく見ろ
僕は死神だ
ここで人間の命を奪うために
ずっと踊り続けていたんだ

青年はにこやかに言った
君は女の子だったんだね

死神は理解できなかった
頭がおかしいのか
それとも気でも狂っているのか
肉の朽ちた姿を見ても
死神だとわかっても
まだ君は立ち去らないのか
命を取るぞ
死んでしまうぞ

青年はひとつも怯えなかった
君は使い魔だね
死神に魂を持っていくと
元の姿に戻すと言われたんだね

骸骨の道化師は黙っていた
さらに青年は聞く
それで騙されたのは何度目だい?
騙されて騙されて
そんな姿になったのだろう?

何故それを知っている
骸骨の道化師は怯えた
事情を知っているのなら
きっと仲間に違いない

青年は果実を差し出す
騙してきた悪魔たちと同じ甘い匂い
今すぐかぶりつきたくなる
おいしそうな色合い

果実を食べてはいけない
次はどんな姿になって
酷い扱いをされるか
わかったもんじゃない

おいしいのに
青年は一口食べた
本当は君に全部食べさせるつもりだった
信用してくれないから少し食べてしまった
死なないし大丈夫だよ

何が大丈夫なものか
悪魔め
周囲の景色は灰色になって
既に色は抜けていた
世界はどんどん黒くなっていく
骸骨の道化師の後ろに
大きな死神の姿が浮き上がり
骨だけの手のひらに乗った道化師が
口を鳴らしていた

このまま一緒に地獄に落ちてもいいけれど
青年は嫌がらずに言うと
骸骨の道化師は怒った
そこまでして僕を貶めたいか
次はどこへ連れて行くつもりだ
もう罠になんかはまらないぞ

この果実は私の魂の一部
数多くあげられるわけじゃない
だから受け取って欲しい

道化師は言う
受け取る理由が僕にはない
青年は言う
私にはあげる理由がある

利害もないのにあげるなどとはおかしい
見返りを求めぬ行いなどあるものか
信じない信じない信じない

青年は果実を口に含み
口づけをして道化師にあげました
驚いた道化師の喉を果実が通り
腹の奥底に染み渡ってくのがわかりました

みるみる道化師の骨の表面に肉が戻り
赤々とした皮膚が浮かび上がってきました
死神の取引は
周囲を見渡すと黒々とした世界から
灰色の世界に戻っていました
それでも世界の姿は完全ではありませんでした

青年はどこに
見渡すと青年は消えかかっていました
ごめんなさい
本当はすべてあげなければいけなかったんだ
君が長く食べなかったせいで
私の精神は消耗してしまった
あの果実は魂の一部
それを分け与えたんだ

世界は完全には戻らなかったようだね
また持ってきたいけれど
しばらくかかりそうだ
君さえよければまた用意できる
でも離れ離れになるよ
死神の契約は破棄された
その代わり私と契約したんだ

道化師の女の子は叫びました
騙した騙した騙した
私は騙された騙された騙された
お前も悪魔の仲間だったんだ

青年は言いました
私は君を利用しない
ただ君の素顔を見たかったんだ

女の子は聞きました
それでどうする
青年は答えます
それだけだよ
聞いて女の子は驚きます
それだけのために
なぜこんなことをする
青年は首を傾げています
私にとってそれだけのことは
とても大事で幸せで嬉しくなることなのに
女の子は理解できませんでした

灰色の世界には人がいました
灰色の人たち
色のない品々
どうしてこんな場所に戻してしまったのか
青年のしたことがわかりませんでした

これからどうしたらいいの
私は灰色の世界で生きることに耐えられない
青年は困りました
それなら僕の手を繋いでいなよ
少しずつだけれど世界に色が戻る
半信半疑で女の子は手を繋ぎます
青年の手から力が流れ込んでくるのがわかりました
あなたは一体誰なの
私はあなたと契約して何をすればいいの

青年は言いました
私は錬金術を学んでいるもの
魔界の秘術を少しだけ知っていて
それを使ったんだ
果実を食べることで死神との契約は途絶えた
けれど君は私に魂の半分を与えたんだよ
でも何も望まない
君の自由にすればいい
信用してくれるのに時間がかかりすぎた
果実の効力も半減したし
私が少しかじってしまったからね

青年は懐中時計を出す
ここからは時間はデタラメに動き出す
誰かの心の時間かもしれないし
別の世界の時間かもしれない
滅びの定めに従いながらも
もはや素直な時間の進み方には従えない

女の子は謝りました
ごめんなさいごめんなさい
一生懸命してくれたあなたを疑って
最初から信じていればよかったのに

青年はほほ笑みました
裏切りに満ちた世界で
悪魔がはびこり聖職者すらも毒する
誰も信用できなくて当然だよ
私も魔術に手を出し
人間の世界から追放されたんだ
大司教の寿命を延ばすために
魔界の秘術を会得したけれど
目的が達成された後
悪魔信仰者として追われる身となった
君と同じだよ

この世界は虚無
何も残らないかもしれない
今だって一刻として朽ちていき
私たちは色あせた世界に引きずり込まれる
私たちが死なない代わりに
世界が代わりに死んでいくんだ

誰かを信じることは
勇気のいること
騙されないように
人を見るには
世界の色に騙されてはいけないんだ

女の子は青年の言葉の意味を理解できずに
ただうなずいていました
たとえ悪魔の手先だとしても
もう失うものなどないと思っていました
誰かを信じるには
心は押しつぶされそうに辛いけれど
ただひとつ
青年と世界の結末を見てやりたいと
ただその思いだけで
付いていこうと決めたのです

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地獄の底の極寒で
閉じ込められて震える
一人の少女がいた

涙すらも凍らせ
心すらも深き氷壁へ
埋められ
番犬に見張られ
身動き一つとれず
助けられることを諦め
絶対零度に近い感情で
通り過ぎる人を見つめていた

通り過ぎるたくさんの人は
寒い寒い
ここにいると凍え死んでしまう
そう言って
少女を見ながら一言
「かわいそうに」
というだけで
何一つ助けることもせず
視線を向けたあとは
興味がなくなったかのように
みな足早に通り過ぎた

地獄に落ちた人々は
みな私利私欲にまみれていて
自分が助かることばかり考え
少女のことなど考えなかった

少女は一人で泣き続け
そして涙すらも流れないほど
すべてが凍り付いて
深く閉じ込められていった

声も出せない氷壁の中の少女は
毎日祈っていた
夢を見ることだけでもいいだろうと
毎日夢想していた
助からないのなら
せめて夢の中だけでも

ある日ふと通り過ぎた男が居た
氷壁の中から見える男の姿は
はっきりとは見えなかった
もしかしたら他の亡者たちと一緒
そう思いながらも
心の声を出してみた

すると男は立ち止まり
氷壁へ手を触れ始めた
ここは厚い氷の中
両手だけでは
とても地獄の氷は
溶かすことは出来ない
少女は諦め混じりに
珍しいことをする男を見ていた

男は根気強く
毎日毎日
氷に触れ続けた
そしてある日ようやく
少女の指先だけが出た

「かわいい指先だね。ようやく出てきた」
男は少女が埋まっていたのを
知っていたかのように語りかけた
あれだけ地獄の氷に触れ続けたのに
なおもあたたかな手の温度が
指先から少女の心へと
静かに伝わってきた

あなたはここに居るべきではない
私にかまわないで
私は呪われた女
あなたを想えるだけでいい

心の中で必死に願いながらも
男の存在は大きくなりました
男は諦めずにずっと氷に触れ続け
ようやく少女の顔が
見えるようになりました

「ようやく見えた。美しいお嬢さん」
少女は自分のことを
ずっと醜いと思っていました
醜いと罵られ
地獄の氷の牢獄に閉じ込められ
長年暮らしてきた少女にとって
男の言葉は嘘に聞こえました

きっとこの男も
私を利用して
もっと酷い牢へと閉じ込めるのだ

しかしわからないことがありました
それならどうして
氷を溶かしたのか
なおも溶かし続けているのか
その両手で諦めもせず
毎日毎日触れ続けるのか
あなたは痛くないのか
冷たくて凍えてしまわないのか

少女は泣きました
酷いことをされるのではないか
亡者どもよりも
酷い悪魔なのではないか
怖くて不安でたまらなくて
たくさん泣きました

しかし男はその度に
少女から溢れ出て凍りつく涙を
両手で触れ続けて溶かしました
その両手は灼熱でもなく
少し熱い程度のあたたかさで
限りなく絶対零度に近い
地獄の氷壁を
少しずつ溶かし始めているのです

男が誰かを知る前に
想いはどんどん募ってきます
誰もこんなことをする人などおらず
ただ通り過ぎていくだけなのに
いったいこんなことをして
この男に何の利益があるのかと
不可思議に思いながらも
救い出してくれたらという期待と
自分の手で男に触れたいと
願う気持ちが
日に日に強くなりました

長い月日を経て
少しずつ凍りは溶け
動くようになった唇で
男と沢山の話をしました

地獄での日々の話
どうして氷壁の中へ
閉じ込められたか

それはそれは
聞くに堪えない
酷い酷い話でしたが
男は黙って
深く深く頷きながら
何一つ不愉快な顔をせず
真剣に聞いていました

そんな男の姿が
少女はすっかり好きになりました
好きでたまらなく
早く氷から出たいと願うようになりました
そして何年も経って
ようやく氷から出ることができ
男の体を抱きしめることができました

長年地獄の極寒にいたのに
体は冷えてもおらず
感じたこともないあたたかさで
少女を包みました

「ここから出よう。美しいお嬢さん」
男は変わらぬ笑顔で
変わらぬあたたかさで
少女の手を引きました
少女は男ばかり見ていて
気がつかないことがありました
「番犬はどうなさったの?」
地獄の氷牢地帯には
番犬がいたはずでした
「番犬の肉で飢えをしのいでいたんだ」
少女は驚きました
あの凶暴な番犬を既に倒していたのです
それもその肉で飢えをしのいでいたなんて
驚きを通り越して
法螺でも聞いているような気分でした
まるで実感がわかないのに
救い出されたことすらも夢のようで
何も実感がわかないまま
手を引かれ
ようやく地獄の氷牢地帯を出たのです

少女は奇跡にみまわれたようでした
ああ、でも
もし希望を持ち続けていたら
私の魂も死んでいたでしょう
こうして手を引かれ歩いていけるのは
もしかしたら希望を持たなかったせいかもしれない
と思いました
でも今はこの手を握り続けたい
強く感じるのでした

「行こうか」
男の優しい微笑と
強い瞳に
「はい」
と強く手を握り返し
少女は暗闇から出て行きました

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悲しみと
痛みと
夢を抱えて
暗闇に落ちて
死に絶える

夢の残骸は
憧れの焼け野原は
風が撫でている
無意味な風が

あれほどの愛は
どこへ消えたのか
あれほどの思いは
なかったのだろうか

探しても見つからず
なくした思いだけが
積み重なっていく

そのまま消えて
なくなってしまうのか
少しでも思い出として
心の隅に
本当に片隅に
残っていてくれるのか

ああ
君よ
遠き人よ
憧れとともに
消えていってしまった
好きな人よ

拍手[1回]

ふるふると
ゼリーのような心臓が
手のひらに乗っていて
怯えたように
ふるふると
震えながらも見つめてくる

少しだけ力を入れれば
潰れてしまうのではないかと
思ってしまうほどに
心臓は透き通っていて
指が軽くめり込んでいく

傷つけないように
命を奪わないように
とくんとくんと
脈打つ
やわらかな心臓を
潰さずに
傷つけずに
大事に守っている

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