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名も無き言葉たち 散文 詩
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夕日のように
染まりきった柿木に
カラスが一匹
止まっている

啄むことはなく
見張るように
くまなく辺りに
目を配らせる

庭先で男が一人
カラスを眺める
互いに一言も言わず
互いに柿の実の
色を目に映している

路面電車が揺れ
音を響かせたとき
カラスが一鳴き
柿木を揺らし
空に飛び立った

男は柿の実を
二つもぎ取り
一つはかじる
甘く少しだけかたく渋い
もう一つを
台所で剥き
妻のために切りそろえ
テーブルにおいた

頬張って
柿音聞こえて
見つめ合う
一声かけ合い
渋み忘れる

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グラスの底にへばりつく
乾いた赤ワインのシミ
洗うことなく
二日酔いの頭痛を消すべく
洗わず水を入れる
赤インクのように
水に溶け
多少アルコール臭い水を飲み干す
洒落たものは何一つなく
昨夜の痴話喧嘩の悩みに
胃がひねられる
脳味噌を取り出して
酒に溶かして
甲羅酒にしても
旨いだなんて言って
誰も飲みやしない脳味噌を使い
また悩みにふける
銭はあるかと財布の金を数え
すぐに数え終える中身に
苛立ちを感じ
銀行の金庫の金はいくらかと
つまらぬ妄想を始め
冷蔵庫の中の残り少ない味噌で
きゅうりをかじる
昨日抱いた感触は
誰のものか
かすかに残った膨らみの感触に
一人思い返しては
股間をまさぐる
安酒は底をつき
一杯の酒に飢える
女を欲しては
財布を何度もほじくり返し
中身のなさに悪態をつく
金にも女にも見放され
小さな部屋でうずくまる
部屋が狭まり押し寄せてくる
自分に心地良い狭さで収まると思いきや
窮屈な程度に収まっている
居心地の悪さに
諦めを向けるのか
挑戦としてあがき続けるのか
阿呆の一生は
妬みの言葉で埋め尽くされる

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いつの間にか
当たり前になり
いつの間にか
少しのシグナルに
気がつかなくなる
いつの間にか
これでいいと思い
いつの間にか
最初の熱が失われている
どちらともに
徐々に薄い失望が重なって
どちらともに
どうしようもないと思い始める
興味は失われ
行動が無意味に思われ
会話は愚痴ばかりになり
話し合いは文句になる
して欲しいことばかりを言い
出来ることは後回しになる
苛立ちは積もり
互いの顔すら嫌になる
誰かと比べだし
あいつはいいが
君はダメだと批判する
互いに卑屈さと怒りをぶつけ合い
ついにはサヨナラをする
私たちの付き合いは
いかにして間違ったのか
私たちの関係は
いかにして崩れていったのか
私たちは好意を持ち寄っていた
私たちはうまくできると思っていた
だけれど今の状態にも慣れた
外は輝いているのか
もしかしたらここよりましかも
夢ばかりが膨らんで
現実は手付かずのまま

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今キミはナニ考えてるの?
今キミの幸せドコにあるの?
キミを幸せにする方法オシエテヨ
マヨイナガラの手探りで
気持ちしっかり持ち続けて
キミが幸せであるように

キミの不安が伝わって
捨てられたカッターナイフの欠片
ドコを歩いてイコウカ
ホンノちょっぴり迷いながら
足裏の血ぐらいイイカなんて
笑いながら進んでいく

キミが幸せであるように
キミの手に薔薇の花を持たせたい
どうしたら薔薇はソダツノ
教科書も参考書も
きっと当てにならない

夢や希望だけではシンジャウネ
イキヨウ進もうゼツボウせずに
キミノ幸せオシエテヨ
問いかけながら進んでく

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数多くの視線に晒されて
私の居場所がなくなってしまう
レーザーのように
鋭く射抜かれて
私の体に穴が開いてしまう
避けようとして
私の体は歪んでいく
そのままの形でいられない
自分の形がわからなくなる
私が私のままでいたら
私の場所はどこにもなくなって
生きる世界すら追い出されてしまう
私の苦しみを共有するために
鋭い視線を掻い潜っている人たちと
ひっそりと語り合おうとして
私たちの違いに愕然として口を閉じる
私たちは苛立ちを感じあいながら
誰かの視線で歪んだ自分を卑屈に思い
視線の形に添って
機能的に動く誰かをどこかで羨む
攻撃的な戦争のような鋼鉄の視線に
心を射抜かれてしまったら
私はどうやって進んでいけばいいだろう
有刺鉄線の蜘蛛の巣が
迷路のように人生を阻んでいる
傷つかないように迷わないように
避けようと避けようと
ああ ここはどこだろう
気がつけばどこに行こうとしたかわからない
ただひとつ明かりがあったとしても
遠い 遥かに遠い
それでも命に背中を押されて
私はうずくまることを許されない
許してはもらえない

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同調を欲していた
一つになることを渇望していた
気がつけば深く強く
好きになればなるほど
ひとつになりたい
もっと自分と一体になって欲しい
感覚を一つに
痛みも喜びも価値観も
すべて分かち合い
完全な理解を

求めれば求めるほど遠くなり
諦めれば諦めるほど苛立つ
しょうがないよね
頭でわかっていても
衝動が止まらない
指を噛み 肉を切り
涙を流す 血を流す

君はどうして冷静でいられる
君はどうして気づかないでいられる
もっと理解を もっと同調を
私が憮然な顔になる前に

好きでもうまく伝えられない
愛してもどうしていいかわからない
もっとひとつに
でも君は別の人間
ひとつになれない苛立ちと
伝わらない感情と
言葉にできないフラストレーション
ちかちか花火のように瞬いて
眩暈の中で
目を閉じられずにいる

抱いて 抱きしめて
きつくきつく
愛して もっと愛して
心が揺らがないように
体が勝手に動かぬように
あなたの鎖でもっと縛り付けて
私を繋いで飼いならして
あなたにその力量と
強く深い愛情があるのなら

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無数の波紋の打音
地上でぶつかり合う音
反響し合い
侵害し合い
音波がぶつかり合い
風のざわめく音は
かき消される
ざわりざわりと
散らされる

激しい水滴の
猛攻に
木の葉はうなだれ
土は削られ
華は散らされる
ざわりざわりと
蹴飛ばされる

見えぬ先の
深い灰色
くぐもった湿度の
無数の歌
動かぬブランコ
きしみもせずに
ボタボタと
涙を垂らす

かび臭い床を
嘗め回すように
じとりじとり
爪の間から

遊んでいた声は
また雨上がりに
今はただ
結ばされたものが
ばらばらに崩れ
滴り壊れ
再生を待つ

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疑いから始めることと
信じることから始めることと

人は二つの入り口から
他者を評価しながら
疑いから始める人は
欠点だけをまず見つけ
信じることから始める人は
長所だけをまず見つけ
進めなかったり
進んだり
まるで何をどうしていいか
わからないほどに

いくつもの対比を繰り返し
優れているとか
劣っているとか

君が明日見る相手は
どちらかでしかなくて
評価したり付き合ったり
まるでシーソーゲームより
激しく不安定で
まるで明日を作るよりも
ひたすら安定を望む

どちらに転ぶ
明日はどちらだ
未来はどこへ
見えない
見つけられない
まるで
迷うよりも
道を探し続け
足元を見れず
焦るばかり

信じられるものは
どこにいったと
自分を無視し続ける

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たくさんの言葉よりも
たった一度の抱擁がぬくもりを与えることがある

たくさんの触れ合いよりも
たった一言の言葉が心を動かすこともある

たくさん与えればよいものではなく
たった一つだけのことだけでも寂しくなる

言葉を並べれば
矛盾したことはたくさんあって

行動だけでは
不安になることはたくさんある

どうして私たちは
空を見るとき石につまづき
地に目を見張るとき空の広さを忘れるのだろう

どうして愛を行おうとせず
愛を語りたがるのだろう

どうして恋に憧れて
傷つくことを恐れるのだろう

遠くを眺めて
近くを見逃し
機会を逸しては
夢を見続ける

急ぐ必要はなくとも
歩みを躊躇する必要はない

手の届くものを手に入れて
私たちは空を目指す
バベルの子供たち

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助けてくださいと
小さく叫んでいた
見知らぬ魂は
放っておかれた

一杯の味噌汁は冷め
ご飯は固まっていた
パンにはカビが生え
ミルクは腐っていた

おめかしして出かける
叫ぶ魂をよそに
命は面倒
使えない子は屑

利己心は冷たかった
魂を凍りつかせるほどに
虚栄心は恐ろしかった
痛めつけられ震えるほどに

死んだほうが楽
生きているのは辛い
一本のロープと
頑丈な支え

支えがあれば
出来るんだよ
死にに行くことも
生きようとすることも

街のビルは反射する
太陽の熱を爛れるように

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