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名も無き言葉たち 散文 詩
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耳元で歌ってくれる君。
僕の知らない歌ばかりで。
でもとても心地がいい。

そのまま、歌っていて欲しくて、
歌を止める君に、もう少しだけ、と言う。
歌が好きだから、と言う君。
瞳を閉じて、この時間がとても幸せなことに気がつく。

いつもはきつい抱擁で君に触れたいのに、
歌っている時だけは、
君の口元から零れる、
優しい音色に耳を傾けていたくなる。

「大好きみたいだ」

独り言のように、ぽつり言うと、
君は何か言った? と歌を止める。

「なんでもない」

微笑みながら君を見つめると、
また君は歌いだす。
今なら願いが通じるんじゃないか。
木漏れ日の中でうたたねをするようなぬくもりで、
そっと神様に願う。

「二人が、愛し合えますように」

きっと、もっと幸せになれるだろうから。
君の歌を聞いていられるから。
だから、伸ばそうとした手を胸元に置いて、
君への想いを、小さく口に出す。

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