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名も無き言葉たち 散文 詩
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愛するあなたは死んでしまったと聞いた
どこへ行ってしまったのだろう
悲しみにくれるよりも前に
沢山の疑問符の海を泳いで
絡みついた網を振りほどけず
もがき探す体は意識を失わずに

愛するあなたの亡骸は声を出している
どこから聞こえてくるのだろう
抜け道を探すよりも前に
沢山の言葉の海を泳いで
しがみ付いた錘を振りほどけず
沈み狂わす意図は夜叉の怒りで

失っていくぬくもりの自分勝手さで
乾いた心の痛さと可愛さで
わからなくなって
首を少しずつ絞められて
出口がわからないほど
迷い込んで悩んで
愛していたはずの
強い気持ちさえ
忘れそうになってしまう

愛するあなたの亡骸を捜している
どこにも見当たらないのだろう
諦めが心を殺すよりも前に
沢山の想いの湖に入り
壊れた瞳を取り替えて
見える世界の明日を捉えて

愛するあなたは死んでしまったと聞いた
どこかの遥か彼方の見知らぬ場所で
思いもつかない死に至る淵
私が愛を葬る前に
逃げ出す世界の
明日へと

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朝が来る前に雨が降る。

夜を引き裂いて、
    一粒一粒叩きつけられながら。

昨日まで見た景色を失って、
 記憶の欠片は脳から飛び去って、
    少しずつ忘れ、
     少しずつ再構成されて、
      少しずつ違う自分になっていく。

      喪失すらもわからずに、
     喪失を繰り返し、
    大地につけた足跡は、
   風によって洗い流されていく。

   君を憎んだ日々はどこにいったのだろう。
    あんなに愛していたのに。
君を失い悶え狂った日々はどこにいったのだろう。
    あんなに想っていたのに。

引き裂かれるような苦しみの味が、
 いつの間にか咲いている
    たんぽぽの根にも似て。


 殺されそうだよ。


雨水に ふやけた 柱に 刺さっている 
        錆び釘に。
あいつが足の小指に突き刺さって
       二度と動けなくなりそう。

      朝に向かう前に、
     雨に打たれて冷たくなる。

   朝が来る前に雨が降った。

 夜を爪の先で引き裂いて、
剥がれた爪は指から離れず。
引きちぎってしまいたいのに、
躊躇してしまう。

朝日が昇ったら、歪に治っていくだろう。

そうして
  臆病なまま
    何も出来ないまま
      決められないまま
  進まないまま、酷く傷だらけの
歪んだ体が
   出来上がってくる。

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ロードローラーが走り
深夜の工事は右へ左へ
地面を打ち付けならし
水の巻かれたコールタールは
クジラの皮膚のように輝く

警備員が光った棒を降る
あっちへ行け
こっちは通れないぞ

誘導されるまま
家路を遠回り
道路は塗り替えられて
都会の皮膚は
月夜の下で黒光り

朝を迎える前に
皆濡れた皮膚が乾いたら
いずこかへ消え去る

焼かれ固まり
日を重ねる前に
踏みつけられ
剥がれていき
やがては今日の景色

繰り返し繰り返し
塗り替えられて
今の景色

地球の一片を形作るクジラは
皮膚を治療しながら生き延びる

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2+2=5さ
戦争は平和
浪費は美徳
食い散らかせば美味い
不幸は蜜の味

当たり前のことさ
疑うだけ苦痛なのさ

青は警戒
赤は平穏
黄色は立ち止まれ

いつからだったっけ
そう思い込んでいた時期もあったよ
奴隷のように思考を鈍らせ
心の平穏を得るために主を選び取れ
鳴り止まない声は頭に染み付いて
やがて我らの言葉になっていく

自由は束縛
足掻きは不条理
決められた道をしっかり行進しよう
2+2=5さ
昔からそうだったろ?

完璧な二重思考を描いて
自由になるための手段を選ぶ
何の争いも起こさない
何の反抗も示さない
自由への効率的な
最も最短距離の方法さ

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新しい眠りに休んで
遠い地を飛ぶ蝶を懐かしんで
知らない記憶の 夢冒険
ガラスの靴で星空を歩く

もう少しだけ 浅い眠りを妨げて
もう少しだけ 回る惑星を旅して

星屑のドレスを纏い
欲しがりの辛さを払い
寂しがりの瞳を向けて
楽しさを恋するように
一緒に 一緒に

今夜の月は脇役で
生きとし生ける祈りの
か弱く気丈な魂たちの
きらめき集うフェスティバル

死にゆく願いの散り際に
遠い地に舞う蛍の極光
天の薄氷(うすらい)を溶かして
震える鼓動を舞い上がらせる

あと一つだけ 終わるまで囁いて
あと一つだけ 止まらぬ時を砕いて

天体の斜光は絹糸
編んでいく羽衣はなびき
期待する明日は飛び込む
手の平を光にかざすように
一緒に 一緒に

明日の光は特別で
生きとし生ける渇望の
叫び求める勇気たちの
戦い麗しき今日の眠り

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忘れるな
あの憎しみを
忘れるな
あの悲しみを

怒れ
怒るのだ
草を切れ
木を切り倒せ
岩を削り取り
水を得るのだ

硬く手強い
道なき道で
手を汚し
血みどろになり
拳が握れぬようになろうとも

握りこみすぎて
弱りきった手でも
かじかんで
凍えすぎた手でも
命さえあればいいのだ
命でもって戦えばいいのだ

憎しみを持って
優しさとせよ
悲しみを持って
尊厳とせよ

与えぬまま
人に常に期待をするは
盗人であると心得よ

憎め憎んで憎みきれ
果ての虚しさをとくと知れ
悲しめ悲み悲愴に暮れろ
人の孤独を知ることになるだろう

喚けぬほどの苦しみを背負えば
誰かの価値がようやくわかる
命を繋げるための必死さがわかる
罪であり美しきことなのだ

お前の道はお前のものだ
だからこそ
前人未到の地へ思いを馳せ
怒れ 憎め 悲しめ
道を切り開くのだ
想いの先に
真の対話がある

草木で手が切り刻まれようと
岩で拳が砕かれようと
闘い続けるのだ
生き続け 道を作り続けるのだ

忘れるな
あの憎しみを
忘れるな
あの悲しみを

怒れ
怒るのだ
草を切れ
木を切り倒せ
岩を削り取り
水を得るのだ

最後に墓標に添えられる言葉が
最も美しいものでありますように

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綺麗に踊る 小粋な冬 
愛され歌う 朝日の手前
静かな温度差で ささやきかけて
迷って掴んで 歌って その手を

高い 高い あの場所への
低い 低い 根の張る土の
聖なる 聖なる 伸びゆく空への

溶けて混じる 命の移ろいの
声の先に通じる 生きゆく涙の
ミルクを溶かしたカフェオレみたいな
ねぇ 見えたでしょ 混ざる瞬間

また見えた音符の踊る果ての光
くるくると回って誰かの心落として
前方に見えてくる 人の繋ぐ道

ねぇ 感じたでしょ 触れる瞬間
カカオが舌に広がるマフィンみたいな
心の先に滲みゆく 生きゆく血潮の
溶けて交わる 午前の移ろいの

静かで 新たな 伸びゆく光への
軽い 軽い ステップが奏でる
重い 重い 踏みしめた地への

抗い喜んで 語って その眼を
口付けの温度差で 黙って飲んで
愛され歌う 朝日の手前
小粋に踊る 綺麗な冬

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暴力的にしゃかりきで
犯罪的に打ち付けて
燃ゆる秋の大樹は血しぶき
両手で大地を掴み上げ
土を抱えて天上へ

私が忘れたあの日々の
ここへと繋がる過去の日の
笑いと悦び 悲しみ別れ

連れて行けば迷い人
ここ何処 無住所 そこかしこ
紅 黄金(こがね) はらりらり
道なき道の模様は不規則
やっぱりここ何処 迷い人

無感動な灰色世界
悲観的な傲慢で
焦げた深秋 冬近く
凍えそうな体は 忘れずに
花を枯れさせ無力感

私が捨てたあの日々の
あの場所 あの人 想い出の
無価値で大きな粗大ゴミ

連れて行けない迷い人
ここ何処 忘れて 明日もなく
本当? どうして? わからない
道なき道の標識でたらめ
やっぱり寂しい 迷い人

命は土へ やがては緑や花に
時を経て 年を経て 積もり重なり
豊かな育みになっていく

暴力的にしゃかりきで
犯罪的に打ち付けて
燃ゆる命の大樹は銀の華
両手で希望を掴み上げ
夢を抱えて天上へ

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美しくもけだるい
儚くもあいまいな
見えぬ行く先
糧への実り

声高に叫んだ苦しみは
息だけ抜けて溺れゆく

笑っていてと願ったら
笑えたらいいねと寂しげで
笑ったあの日を思ったら
笑い方を忘れて悲しくて

言葉を綴って
言葉を忘れて
言葉に詰まって
言葉を見失って

色づく葉はすぐさま枯れて
冷たい風に散っていく

叶えて欲しいと願ったら
涙にくれた日々を重ねて
叶えられぬ不満に
傷つけた心も何処かへ

秋は深まって
やがては白く凍る

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ぎっしりと敷き詰められた愚かな人並みに
ぎっしりと詰め寄せた洗脳の手先どもに
ずっしりと命を切り取られ地を吸われ
ずっしりと君の恋しさを泥靴に踏みにじられる

公園で一人家に帰れずカップ麺をすする夜に
ブランコを風が微かに揺らし昼の名残
狂えるほどの孤独と美しい月夜に
阿呆のように身を避けていく非常識

ざっくりと無知さにふりまわされる大衆に
むっくりと感情にふりまわされた個人たちに
ぶっさりと怠惰の教養さが垣間見え
がっつりと愚弄の驕り高ぶりの友とある

かの最良に自己愛の最大化が存在し
私の押し付け合いに息詰まる所業
死に際にすら立たされてもなお
薄気味悪き声高き衆愚の理屈

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