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名も無き言葉たち 散文 詩
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臆病な少年は銃を手に取った
ナイフを持つ人間に刺される前に

些細な恐怖心から始まった
疑心暗鬼と孤独感
たくさんの裏切りと
優越感と
防衛反応から
こぶしを握る人間を警戒し
ナイフを手にした

少年は強くなった気がした
勇敢さを手に握っていると思った
体が武者震いした
何にでも勝てる気がして
初めて自分の存在を
誇示できるような気がした

少年は強くなって声を発した
声が聞き入れられることに
興奮を覚えた
しかし一方的な声に
心を荒立てるものが現れた
やがて増えて
少年と同じようにナイフを手にした

少年の声はたちまち届かなくなった
無視される恐怖心から
少年はもっと強さを欲した
このままやられてしまうのではないか
少年は仲間だと思っていた人間に
次々と手のひらを返され
誰も信用できなくなった

臆病さは想像をかきたてた
やがて妄想となり
少年の心を脅かした
一体誰が味方なのか
誰の言葉も信用できなくなった

臆病な少年は銃を手に取った
ナイフを持つ人間に刺される前に

前のように認めて欲しいと
自分の声を聞いて欲しいと
少年は銃を突きつけた
ナイフを捨てなければ撃つ
少年の脅しは通じなかった
お前のような人間を
認めるわけにはいかないと
周囲は口を揃えて言った

少年は恐怖に震えた
本気であることを見せつけようとした
臆病ではなく
勇敢であることを見せ付けようとした

少年は引き金を引く
仲間だった人間が一人息絶える
少年は理解できなかった
自分の言うことを聞いていれば
いや どうして僕は
弾丸を放ってしまったのか
ただ認めて欲しかっただけなのに
ただ声を受け入れて欲しかったのに

臆病な少年は
誰かの気持ちを考えることもなく
かつて仲間と呼んだ人間たちに
塗りつぶされて存在を失った

残されたものは
ノートの上にべったりと付いた
真っ黒な染みだけだった

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