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名も無き言葉たち 散文 詩
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耳元で歌ってくれる君。
僕の知らない歌ばかりで。
でもとても心地がいい。

そのまま、歌っていて欲しくて、
歌を止める君に、もう少しだけ、と言う。
歌が好きだから、と言う君。
瞳を閉じて、この時間がとても幸せなことに気がつく。

いつもはきつい抱擁で君に触れたいのに、
歌っている時だけは、
君の口元から零れる、
優しい音色に耳を傾けていたくなる。

「大好きみたいだ」

独り言のように、ぽつり言うと、
君は何か言った? と歌を止める。

「なんでもない」

微笑みながら君を見つめると、
また君は歌いだす。
今なら願いが通じるんじゃないか。
木漏れ日の中でうたたねをするようなぬくもりで、
そっと神様に願う。

「二人が、愛し合えますように」

きっと、もっと幸せになれるだろうから。
君の歌を聞いていられるから。
だから、伸ばそうとした手を胸元に置いて、
君への想いを、小さく口に出す。

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小さな箱に詰められた
小さなセカイを信じて
あちらの箱は美しいかしら
思った途端
手にしていた箱を捨てる

新しい箱の中は
新しくて綺麗で
また箱の中に詰め込んで
小さなセカイを信じて
汚れてくると
あちらの箱は美しいかしら
思った途端
手にしていた箱を捨てる

箱の中は夢のセカイ
永遠に続くセカイのよう
お菓子がたくさん散りばめられて
甘いものが大好きなの
甘いものがないと生きていけない
新しい箱はどこ
幸せにしてくれる箱はどこ
箱の中を覗く瞳は好奇心
汚い箱はもういらない

あちらの箱は美しいかしら
思った途端
手にしていた箱を捨てる
部屋は捨てた箱で埋まっていく
汚い箱はいらない
甘いものが入っていない箱はいらない
捨てたセカイは思い出にもならず
信じたセカイは裏切りになる

だって
甘いものがないんだから

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自己憐憫と自己完結
思考はぐるぐる

わたしはかわいそう

棒の回りをぐるぐる走る

わたしはここから出られない

棒から鎖を外してあげると
ぴたりと立ち止まる
棒から離れて
周囲を歩く
物音に驚き棒へと戻る

わたしは外では生きられない

棒に鎖をつけてあげる
元気よく走り出し
棒の回りをぐるぐる

わたしはかわいそう
わたしはここから出られない

棒から外してあげるよりも
とても元気に走り回る

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知恵なき者は凍え
知恵を生かすものには毛布を

考えぬものには
宿すら見つからない

あたたかな暖炉にあたる
支配者たちには
火をつけるまでの
途方もない苦労は知らない

分け隔てられた
支配者たちの感覚は
社会を独善的に蝕んでいく

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夕日のように
染まりきった柿木に
カラスが一匹
止まっている

啄むことはなく
見張るように
くまなく辺りに
目を配らせる

庭先で男が一人
カラスを眺める
互いに一言も言わず
互いに柿の実の
色を目に映している

路面電車が揺れ
音を響かせたとき
カラスが一鳴き
柿木を揺らし
空に飛び立った

男は柿の実を
二つもぎ取り
一つはかじる
甘く少しだけかたく渋い
もう一つを
台所で剥き
妻のために切りそろえ
テーブルにおいた

頬張って
柿音聞こえて
見つめ合う
一声かけ合い
渋み忘れる

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グラスの底にへばりつく
乾いた赤ワインのシミ
洗うことなく
二日酔いの頭痛を消すべく
洗わず水を入れる
赤インクのように
水に溶け
多少アルコール臭い水を飲み干す
洒落たものは何一つなく
昨夜の痴話喧嘩の悩みに
胃がひねられる
脳味噌を取り出して
酒に溶かして
甲羅酒にしても
旨いだなんて言って
誰も飲みやしない脳味噌を使い
また悩みにふける
銭はあるかと財布の金を数え
すぐに数え終える中身に
苛立ちを感じ
銀行の金庫の金はいくらかと
つまらぬ妄想を始め
冷蔵庫の中の残り少ない味噌で
きゅうりをかじる
昨日抱いた感触は
誰のものか
かすかに残った膨らみの感触に
一人思い返しては
股間をまさぐる
安酒は底をつき
一杯の酒に飢える
女を欲しては
財布を何度もほじくり返し
中身のなさに悪態をつく
金にも女にも見放され
小さな部屋でうずくまる
部屋が狭まり押し寄せてくる
自分に心地良い狭さで収まると思いきや
窮屈な程度に収まっている
居心地の悪さに
諦めを向けるのか
挑戦としてあがき続けるのか
阿呆の一生は
妬みの言葉で埋め尽くされる

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いつの間にか
当たり前になり
いつの間にか
少しのシグナルに
気がつかなくなる
いつの間にか
これでいいと思い
いつの間にか
最初の熱が失われている
どちらともに
徐々に薄い失望が重なって
どちらともに
どうしようもないと思い始める
興味は失われ
行動が無意味に思われ
会話は愚痴ばかりになり
話し合いは文句になる
して欲しいことばかりを言い
出来ることは後回しになる
苛立ちは積もり
互いの顔すら嫌になる
誰かと比べだし
あいつはいいが
君はダメだと批判する
互いに卑屈さと怒りをぶつけ合い
ついにはサヨナラをする
私たちの付き合いは
いかにして間違ったのか
私たちの関係は
いかにして崩れていったのか
私たちは好意を持ち寄っていた
私たちはうまくできると思っていた
だけれど今の状態にも慣れた
外は輝いているのか
もしかしたらここよりましかも
夢ばかりが膨らんで
現実は手付かずのまま

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今キミはナニ考えてるの?
今キミの幸せドコにあるの?
キミを幸せにする方法オシエテヨ
マヨイナガラの手探りで
気持ちしっかり持ち続けて
キミが幸せであるように

キミの不安が伝わって
捨てられたカッターナイフの欠片
ドコを歩いてイコウカ
ホンノちょっぴり迷いながら
足裏の血ぐらいイイカなんて
笑いながら進んでいく

キミが幸せであるように
キミの手に薔薇の花を持たせたい
どうしたら薔薇はソダツノ
教科書も参考書も
きっと当てにならない

夢や希望だけではシンジャウネ
イキヨウ進もうゼツボウせずに
キミノ幸せオシエテヨ
問いかけながら進んでく

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数多くの視線に晒されて
私の居場所がなくなってしまう
レーザーのように
鋭く射抜かれて
私の体に穴が開いてしまう
避けようとして
私の体は歪んでいく
そのままの形でいられない
自分の形がわからなくなる
私が私のままでいたら
私の場所はどこにもなくなって
生きる世界すら追い出されてしまう
私の苦しみを共有するために
鋭い視線を掻い潜っている人たちと
ひっそりと語り合おうとして
私たちの違いに愕然として口を閉じる
私たちは苛立ちを感じあいながら
誰かの視線で歪んだ自分を卑屈に思い
視線の形に添って
機能的に動く誰かをどこかで羨む
攻撃的な戦争のような鋼鉄の視線に
心を射抜かれてしまったら
私はどうやって進んでいけばいいだろう
有刺鉄線の蜘蛛の巣が
迷路のように人生を阻んでいる
傷つかないように迷わないように
避けようと避けようと
ああ ここはどこだろう
気がつけばどこに行こうとしたかわからない
ただひとつ明かりがあったとしても
遠い 遥かに遠い
それでも命に背中を押されて
私はうずくまることを許されない
許してはもらえない

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同調を欲していた
一つになることを渇望していた
気がつけば深く強く
好きになればなるほど
ひとつになりたい
もっと自分と一体になって欲しい
感覚を一つに
痛みも喜びも価値観も
すべて分かち合い
完全な理解を

求めれば求めるほど遠くなり
諦めれば諦めるほど苛立つ
しょうがないよね
頭でわかっていても
衝動が止まらない
指を噛み 肉を切り
涙を流す 血を流す

君はどうして冷静でいられる
君はどうして気づかないでいられる
もっと理解を もっと同調を
私が憮然な顔になる前に

好きでもうまく伝えられない
愛してもどうしていいかわからない
もっとひとつに
でも君は別の人間
ひとつになれない苛立ちと
伝わらない感情と
言葉にできないフラストレーション
ちかちか花火のように瞬いて
眩暈の中で
目を閉じられずにいる

抱いて 抱きしめて
きつくきつく
愛して もっと愛して
心が揺らがないように
体が勝手に動かぬように
あなたの鎖でもっと縛り付けて
私を繋いで飼いならして
あなたにその力量と
強く深い愛情があるのなら

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