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名も無き言葉たち 散文 詩
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ぺろり
今日は一口舐めとって
なあにちょっとだけさ
ばれやしないとたかをくくる

次の日
ぺろりぺろり
なあにこのくらいじゃ
減ったことにはならない
ばれやしないと思う

また次の日
ぺろりぺろりぺろり
減ったような気もするが
なあにばれやしない
だがいささか不安

次の日
周囲を見ながら
ぺろりぺろり
止めようと思ったが
どうにも止まらない

また次の日
なんてことだ
舐めるものがついになくなった
だがもう腹の中に入ったものだ
戻すことなんてできない

ぺろり
口のまわりを舌なめずり
ここにいてもしょうがない
用はなくなったからもういいや

ぺろりぺろり

戻ってきて
全部なくなっているのを見た人
驚き言う
なんてことだ
あれはみんなで分かち合うものだったのに
いったい誰がこんなことを

ぺろりぺろり
あなたの周りに
こんな音が聞こえたら
大事なものを
舐めとっていかれるかも

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たった一言
その言葉が
出てくるか
出てこないかには
雲泥の差があり
私は泥の中で
もがき苦しむのみ

羽が生えているはずなのにと
手をばたつかせる滑稽な人間
チクショウめと
悔しがっても
カラスは悠々と
夕日に鳴き声を轟かせ
我を見下ろすのみ

怒ってはならない
悔しがってはならない
見下してはならない
受け入れるべきものも
受け入れられなくなり
成すべきことも
成せなくなる

わかっていても
心が言うことをきかない

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都会の人形たちは硫酸を浴びて
じりじりと肉を焼かれていくように
もがき逃れのた打ち回り夢を見る
ぶすぶすと朽ちていく心をぼかし
画面に映る麗しき幻想に抱かれようとする
手を伸ばし骨の見える指で
掴もうと掴もうと

誰のための命なのか
心を持とうと迷い続ける
見失い彷徨い枯れ果てる
涙をよこせ
優しさをよこせ
よこせよこせよこせ
心を潰し街というグロテスクな箱庭の中で
掴もうと掴もうと

壊れそうなのか
君の心は
君の優しさは
失くしていきそうなのか
君の感覚は
君の瞳の輝きは
騙され植えつけられ従いさせられ
それでも
掴もうと掴もうと

街を歩く血と肉は
街を動かす骨と飢えは
機械のように動く人形たちは
欲望という名の硫酸に溶かされていく

空を見たか
黒色の空を
ビルに塗りたくられた彩を
欲望の水の中でもがき
泥を巻き上げて濁らせた
希望の光が狭まっていくように
塗りつぶされていくように
人形たちが腕をもぎ足をもいで積み上げたビルの群

人形たちの足跡は怒号にも似た喧騒にすら消され
未来を望む声はか細く弱る
煽り立てるメインコンピューターの指令に逆らえずにいる

ある激しい雨の日
生まれ出でたあたたかな血と肉を持つ少女が赤い傘を差した
壊れ打ち捨てられた人形に
傘をそっと差し出した
人形は壊れた手を出せずに
少女をじっと暗い目で見ている
少女は雨が止むまでずっと傘を差し出していた

雨上がりの光
人形の濡れた顔に光が当たり
目元がきらりと光り
夜は明けてきていた
淡い熱を胸の奥にひそめ
いつか少女に恩返しをしようと
熱を冷まさぬよう
奥深くにしまい込んで
人形は願った
壊れるほどに
その願いを
掴もうと掴もうと
 

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緩やかな
傾斜をくだる
坂の下には
大きな鉄の杭
紫色の空は
晴れることなく
紫色の雨を降らす

緩やかな
傾斜をくだる
風を受けて
くだっていく
車輪はまわり
速さを増していく
車輪はよりいっそうまわり
もうすぐ杭に近づく

残すべき意思はなんだろう
伝えるべき形はなんだろう
もうすぐ散る
世の儚き
命の幻

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浮かんでは消える
泡のように
錆び付いた頭には
思いやりもなく
別の場所へ
悲しくも
抉りだしても
空っぽの言葉は煙のよう
悔しいかな
悔しいかな

ぎぎぎと
壊れた鉄の塊
メッキが剥がれれば
錆がボロボロと落ちる
空回り
空回り

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すべてを捨てる覚悟がなくて
何を得られるのか
自身をかばい続けるだけの
無様な人生
それだけじゃダメだろ

凍てついた毛布
燃えてすぐに灰になるような
新聞紙みたいな心じゃ
社会が涙のでるほどの親切さでかけてくれる
氷の毛布は溶かせない

歩いて滑る氷の床
氷の裂け目に落ちて這い上がれないものもいる

この社会は冷たい大地
花を咲かせるには
太陽みたいな光が必要
現れぬなら
自身がなる
命を削り
我が氷を溶かす

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「愛」を語って壊しあい
「恋」を語って奪い去る

憎しみにすべてが変わる前に
思い出を積み重ねて
背中に残った傷痕に
「よかったね」と慰めかける

すべてが通り過ぎていくとしても
思い通りになった後に燃え尽きても
何もかもが不満で踏み出せなくても
何もかもが憎しみで壁を作っても

キミヲアイシテイタと言えるように

近づいて嘘をついて傷つけて
今のままでいいのだと
過ちは時の中にうやむやになって
気づいた真実は胸をえぐっている

欲しいものだけ手に入る世界はない
教科書はどこにもなくて
辞書に未来は書いていない
それは絶望とは呼べない飢えた求め

モトメルモノガモウナイと言わないように

自分の弱さに何度も涙を流した日々
いつしか人を疑って生きている自分
うらはらに愛が欲しくてたまらなくて
傷ついても正しいと思い込んでいた

理解が足りなくて硬く契りあっていても
わかりあっているからとその場しのぎ
ぬくもりだけ頼りに逃げ出したくなり
代わりを求めてさ迷う魂 汚れきる

心の弱りきった成れの果て
何もかも許せずに 最後に残った光も
小さく消え去りそうな向こう側
幻想の壁 現実は背後に

ワカリアッテイタと言えないままに

いつしか置き去りにされた
気がつけばどこかに忘れた
知ってゆくこともないままに

「愛」を語って壊しあい
「恋」を語って奪い去る

失った大きさですべてを知っていくのだろう
この街も人も置き去りにしたまま
少しでも大人ぶってあがく
守るべきことの意味を知り
少しだけ「愛」の理由を知る

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私には大いなる意思があるのだ
恐怖に打ち勝つだけの勇気があるのだ
勝て
勝つのだ
己に打ち勝ち
敵を倒すのだ
我が道には一片の過ちもなし
目を逸らさず前を見るのだ
ただ前進あるのみ
勝ち進め

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汚れた心に花が咲く

どす黒い紫色で

ひらひら悪の花



己に勝つことは

己の欲望に勝つこと

己の感情に勝つこと



汚れた水に魚が泳ぐ

どす黒い紫色で

共食いをしだす



笑っているよ

大きな月が

笑っているよ

道化師たちが



花粉は飛んで

どす黒い紫色の花畑



誰のための怒りなのか

誰のための矛先なのか

己のため

己だけのため



汚れきった水槽に泳ぐ熱帯魚

汚れきった花畑に咲く腐臭の花

己が好んだ魚たち

己が咲かせた花たち



心に巣食う汚れた魂

育てるのは誰のため

心に巣食う汚れた魂

洗わないでいるのは誰のため



ただ己のため

ただ己だけのため

ただ快楽に汚れきっただけ

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どんな言葉も足りない
なんでだろうと立ち止まる
君だけ
愛している
大好き
離さない
軽く感じて
自分がちっぽけになる
また本気で誰かを愛せるのか
今まで誰も愛していなかったのでは
考えてもしょうもないことばかり
眠る日々にもあたたかな日はあたっている

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