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名も無き言葉たち 散文 詩
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都会の人形たちは硫酸を浴びて
じりじりと肉を焼かれていくように
もがき逃れのた打ち回り夢を見る
ぶすぶすと朽ちていく心をぼかし
画面に映る麗しき幻想に抱かれようとする
手を伸ばし骨の見える指で
掴もうと掴もうと

誰のための命なのか
心を持とうと迷い続ける
見失い彷徨い枯れ果てる
涙をよこせ
優しさをよこせ
よこせよこせよこせ
心を潰し街というグロテスクな箱庭の中で
掴もうと掴もうと

壊れそうなのか
君の心は
君の優しさは
失くしていきそうなのか
君の感覚は
君の瞳の輝きは
騙され植えつけられ従いさせられ
それでも
掴もうと掴もうと

街を歩く血と肉は
街を動かす骨と飢えは
機械のように動く人形たちは
欲望という名の硫酸に溶かされていく

空を見たか
黒色の空を
ビルに塗りたくられた彩を
欲望の水の中でもがき
泥を巻き上げて濁らせた
希望の光が狭まっていくように
塗りつぶされていくように
人形たちが腕をもぎ足をもいで積み上げたビルの群

人形たちの足跡は怒号にも似た喧騒にすら消され
未来を望む声はか細く弱る
煽り立てるメインコンピューターの指令に逆らえずにいる

ある激しい雨の日
生まれ出でたあたたかな血と肉を持つ少女が赤い傘を差した
壊れ打ち捨てられた人形に
傘をそっと差し出した
人形は壊れた手を出せずに
少女をじっと暗い目で見ている
少女は雨が止むまでずっと傘を差し出していた

雨上がりの光
人形の濡れた顔に光が当たり
目元がきらりと光り
夜は明けてきていた
淡い熱を胸の奥にひそめ
いつか少女に恩返しをしようと
熱を冷まさぬよう
奥深くにしまい込んで
人形は願った
壊れるほどに
その願いを
掴もうと掴もうと
 

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